HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

Kitchen キッチン/我愛厨房

STORY

アギー(富田靖子)はふたり暮らしをしていた最愛の祖母を亡くして、孤独な身に。葬儀で彼女はルイ(チャン・シウチョン)という見知らぬ青年に会う。ルイは遺影の前で泣き、アギーにしきりに話しかけるが、彼女は迷惑げにするだけだった。

何度かアギーの元へ訪ねてくるようになったルイは、ある日、冷蔵庫に入りこんでしまったアギーを見つけると、なかば強引に自分の家に連れ帰った。ルイはバーを切り盛りするニューハーフの母親エマ(ロー・ガーイン)とふたり暮らし。二人は優しくアギーに接する。次第にアギーは心を開き、3人の奇妙だが楽しい暮らしが始まるが...

REVIEW

吉本ばなな原作の「キッチン」を映画化。

むかし原作を読んだことがありましたが内容を思い出せず、でもこの香港版を観ている内に思い出せたということは原作に近いんじゃないでしょうか。

富田靖子は声は吹き替えですた。実際は広東語頑張っていたそうですが・・・

でも広東語って難しいので、吹き替えは仕方がない。でもその吹き替えの声が妙に高い。甘い雰囲気でそこはあまり好きじゃなかった・・・

でも富田靖子自体はこの作品の雰囲気に合ってとってもよかった。

エマと朝食をとるシーンでのやりとりとか自然に見えて日本人とかそういう違和感はあまり感じられなかったなぁ。

透明感があってよかったです。ちょっとキャラクターは不思議ちゃんだけど・・・

ストーリーは実に淡々と描かれていますた。

衝撃的なのはエマ(ロー・ガーイン)が殺されるシーンくらい。

あっ、あとカレン・モクがかなりイケイケなキャラだったわい。

普通ならロー・ガーインの女装って大笑いしそうなのに、見た目あきらかに男なんですけど、この作品の雰囲気なのかそれとも本人の演技がよかったのか凄く自然に見える。このエマという存在がもう泣ける。すごく慈悲深い人で息子のルイ(陳小春)を大きく包みこむ雰囲気が出ている。

手紙のシーンとか特にエマという人間性というか器の大きさが伺える。だから泣けるんだよねぇ。存在感は一番ですた。

またエマとルイ、二人の親子関係がいいんだよね。一緒に住むことなったアギーに対し、エマはルイの事ルイはエマの事をそっと「こんなヤツだけど根はいい人」だって事をアギーにお互いが教えあう。ここに凄く仲のいい親子関係が描かれていたし、だからエマを失ったルイの喪失感が後になって解る。

そしてルイは失望のなか旅へ出る。そこで、一度は不味くて捨てたパンを空腹になりかじる。そこでルイはどんなに絶望があっても人は食べて生きて行かなくてはならない事に気づく。そしてそんなルイの前にイタリアンポークを持ったアギーと再会し、一度はそこで二人は別れる。その後、今度はアギーがかけがえのない存在だった事に気づくのだ。

そういう所は当たり前の様な日常や大切な人の存在の大きさをもう一度、気づかせてくれる映画だなぁと思った。

この映画のもう一つ特徴は心情を映し出す背景。

アギーには最初、青で喪失感を表現されている。またルイにはエマを失ってから背景が暗く表現されていました。それが最後、キッチンが映るシーンで暖かい照明に変わる。そこが二人のこれからを暗示しているようで良いラストシーンだった。

ストーリーは普遍的で派手では無い。だけど、かえって説得力があっていい。

退屈な感じは否めませんが、メッセージ性があってなかなかいいと思える作品ですた。

1997/香港・日本

監督:嚴浩(イム・ホー)

出演:富田靖子/陳小春(チャン・シウチョン)/羅家英(ロー・ガーイン)/莫文蔚(カレン・モク)/劉兆銘 (ラウ・シウ・ミン)