HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

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【 映画 】西遊記~はじまりのはじまり~

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若き妖怪ハンター玄奘(ウェン・ジャン)は、“わらべ唄 三百首”を武器に妖怪たちの善の心を呼び起こそうとするがいつもうまくいかない。
ある日、彼が半魚半獣の妖怪に襲われた川辺の村で、村人たちと協力して陸に上げた魔物が人間の姿に変身する。
玄奘が歌うわらべ唄は全然効果がなく、逆に攻撃された彼を女性妖怪ハンターの段(スー・チー)が救う。
シネマトゥデイより引用

 

日本でも馴染みのある「西遊記
その西遊記に登場する三蔵法師孫悟空猪八戒沙悟浄がどうやって出会い天竺へと向かうかを描いた前日譚
馴染みがあるはずなのに日本人が思い描くのとはまったく別の西遊記って印象。

感 想

西遊記ものと言えば、個人的に95年にチャウ・シンチーが主役を演じた「チャイニーズ・オデッセイ」が私のシンチー映画では一番大好きで思い入れも深いんだけど、シンチーが監督になって「西遊記」撮るって聞いたとき一体どんな作風になるんだろうと不安と期待が入り乱れた。
この映画はグロいシーンも多く、奇想天外な展開。笑いもあるのに残酷さもある、なのに最後の最後で心を掴む。
キャラクターも外れない濃いキャラで、チャウシンチーの世界観炸裂。
っつか、チャウ・シンチーじゃないとこれ作れないわ。


冒頭の親子の微笑ましいシーンが一変してエグい描写に切り替わるあたりの容赦のなさ。そこから繰り広げられるコミカルなシーンなんかアンバランスなのにグーっと内容に引き込まれた。

沙悟浄八戒孫悟空も強くて残忍な描き方。容赦ねーなーなんて思いながら、これが「R12指定」だったのはうなずける。
冒頭の親子の場面、猪八戒の店の見せ場とか、孫悟空がハンターを粉々にする場面、残酷でこれ日本受けしないんだろうと感じる。
でも孫悟空の登場シーンの落ち武者感とか八戒が見た目美形なのに顔テッカテカだとか。妙に笑えて細かいんだよねそういうとこ。
所々でシンチーお得意な笑いやアクションが楽しめる。
段一行に騙され囚われる場面も結構楽しい。
服従するヒトガタを使うシーンとか手下の血糊の血しぶきが全然止まらない場面とか相変わらずナンセンス(いい意味で)で緩急のバランスが見事で飽きがこない。
あぁ久しぶりのシンチー作品だなぁって思える。


玄奨(後の三蔵法師)は妖怪を殺さずの善を呼び覚ますために妖怪ハンターとして修業の身。なんかちょっと頼りなくて非力なハンターなんですよ。でも純粋に人々を救いたいって想いが強い。
その善を呼び覚ますのが「わらべうた集」童謡っつか子守歌っつかそれで妖怪の気を静める本なんです。
いやいやいや、それであんな凶暴な妖怪倒せるわけねーって思ってた。

そんなところにヒロインである凄腕ハンターの段(スー・チー)は玄奨に惚れちゃうんですねー。でも玄奨は男女の愛は修業の妨げになると思ってるのかそれに答えない。
あんなキュートなスー・チーに惚れないなんて、どうかしてるぜって思うくらい、スー・チーが可愛いんだわw

ですが玄奨はハチャメチャでぐいぐい来る段に嫌気がさして、そっけない態度を取ったりで段もそんな玄奨に怒り玄奨の持ってた「わらべうた集」をビリビリに破いてしまう。
この童歌集が後にねー活きてくるんですよー。ここは本当に良く出来てた。
あと、段が手首にはめてた金環が功をなす。それが孫悟空に行くまでの過程がねー、あの使い方は上手い。

「チャイニーズ・オデッセイ」でもそうだけど、クライマックスのたたみ掛けが凄いんだよなー。それまでの残忍さとかギャグとかすべてひっくるめて最後切なくさせる。
それと共に赦しというか慈悲というかそういう所も描かれてやっぱこれも一つの「西遊記」なんだなぁって思いださせる。

あと孫悟空が段にダンスを教えるシーンがあれ多分アドリブだけど、本当に楽しそうで印象的だった。


個人的にシンチーは監督業ばっかじゃなく俳優として出てほしいってのが本音でこの作品も監督業で出演はしてなかったけど、
監督チャウ・シンチーってやっぱスゲェな!と唸る一作。


「チャイニーズ・オデッセイ」でも流れた「一生所愛」がこの作品でも流れて、それも良かったなぁ。
でも、やっぱ最後の最後に「Gメン75」のテーマ曲はズッコケた(笑)

さすがだぜ、ぬかりなし。


2013年製作/110分/PG12/中国
原題:西遊 降魔篇
監督:チャウ・シンチー
出演:ウェン・ジャン、スー・チー、ホアン・ポー、ショウ・ルオ、クリッシー・チャウ

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