【 映画 】狼たちのノクターン 夜想曲/大追捕
STORY
19歳の時に少女を殺害して投獄された男ウォンが、20年の刑期を終えて出所した。ピアノの調律師として働きはじめたウォンは、20年前の事件の犠牲者にそっくりな少女シューと出会い、やがて彼女を監視するようになる。そんなある日、シューの父親が海で死体となって発見され、捜査に乗り出したラム刑事はウォンの存在にたどり着くが……。
REVIEW
「殺人犯」のロイ・チョウ監督。「殺人犯」が苦手なタイプの映画だったので不安半分主演がサイモン・ヤム、ニック・チョンって事で期待半分で鑑賞。
冒頭の獄中シーンの暴力場面がかなりエグくて、そらオソロシイ、バイオレンス映画と思いきや物語が進むうちに、なんつーか 2時間サスペンスドラマを観ているような気分に。
ウォン(ニック・チョン)は投獄され20年の獄中生活の中で、首元にペンを挿し自殺未遂する。そのことで声を失い、また獄中で復讐の為に身体を鍛え、さらに凶暴化したように見えた。
ウォンの不気味な存在感。口が聞けない、表情が読めず不敵に笑う部分とか。ぞくっとする。
過去との交差、事件を追う刑事ラム(サイモン・ヤム)と容疑者であるウォンの駆け引きが巧みに描かれていて、それがやがて真実へと向かうとき哀しい男の姿が見えた。
なんつーか、本当の悪は平然と生き、力のない若者はその巨悪な存在に打ち勝つ術を持てない現実も突きつけられているようで苦しみが伝わる。
主人公である刑事ラムは妻を自殺で亡くし、年頃の娘ともギクシャクして過ごしている。
サスペンスドラマとしては、なかなか面白い。ただ、ラムの奥さんの自殺も物語に絡むのかなーと思いきや、そこはあまり関係がなかった。ラムの人物背景の描写の一つとして描かれてたくらい。ちょっとその側面は弱い印象だった。
でも、父と娘の関係、ツイのシューに対する執着、真実が明らかになるに連れカチッとはまる演出。
最初にラムとウォンが街中の電気屋でTVを立ち止まり見ながらすれ違うシーン
ラム 「娘の為なら命を投げ出せる」
最後に喋れないウォンが声を絞りだしながら
「娘の肩車したことあるか?」
とラムに問う場面。
冒頭のラムのセリフ、ラストのウォンのセリフ、この両者の想いがリンクしてグッと来た。
なかなか見応えのある内容ですた。
2012年 香港製作
監督:ロイ・チョウ
出演:ニック・チョン、サイモン・ヤム、ジャニス・マン、マイケル・ウォン