HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

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エレクション 死の報復/黒社會2以和為貴

STORY

樂少(サイモン・ヤム)が組織を取り仕切るようになり、マフィアの世界にはつかの間の静かな時がおとずれた。しかし、二年に一度の会長選挙が近づき、組織内にはふたたび不穏な空気が流れ始める。今の自分の立場に未練を感じる樂少は、今回も選挙に参加したいと長老らに伝えるが、彼らは世代交代を望んでいた。長老たちは事業が順調で人望もあるという若手、ジミー(ルイス・クー)が後継者として適任だというのだが、納得できない樂少は、意欲を見せるジミーに対してさまざまな手段を使ってその行動を阻害しようとする。やがて、樂少によって後見人を拉致されたジミーは、彼と正面から対決することに…。

REVIEW

「エレクション」の続編。きっと、この続編を見ないと、物語の面白さは半減するでしょう。

物語は「1」の内容からから2年後を描いています。そして、「1」で観た闇はさらに深く、暗く、底のない世界が映し出される。

前作のロクVSディーの権力争いから、ロクVSジミーの権力争いへと移行する。

ボスの座に執着するロク、成功の条件の為ボスにならざる負えないジミーのその姿に戦慄を覚えてしまう。人の欲というのは、どこまでも計り知れなく、そしてその欲に獲りつかれた人間の怖さを描いていますた。

前作で静かな存在であったジミーが、ここから大きな役割を担う。前作での寡黙な存在は徐々に存在感を増し、狂気を秘め始める。

中盤の見せしめの場面は、ひたすら怖さしか残らなかった。

一方のロクも前作の最後に見せた、あの一瞬の怖さを少しづつ見せ始める。権力に憑りつかれたままに、周りを操つり、自分の目の前の障害をいともたやすく消してしまう。

どちらの存在にしろ、怖かったのは行為そのものより、目的のために非情なことを平然とやってのける姿だ。

登場人物が多いにも関わらず、それぞれのキャラクターがきちんと描かれているところがよかった。

前作で入り組んでいた他の登場人物たちの役割が、この続編では割とわかり易く描かれている。前作のように誰が誰の味方なのか、騙し騙される形の人間関係でない。前作では、物語の展開でキャラクターの人物背景を描いたのだろう。今回は、その登場人物たちが際立って目立つ感じではないが、物語の展開に溶け込むように描かれていた。

そして、新たに現れる登場人物マーク・チェンとユウ・ヨンの存在が必要不可欠。

マーク・チェンの演じるキャラクターはどんな時にも金にこだわる、ある意味ストレートなキャラ。物語の緩和剤にもなる存在。

一方、ユウ・ヨン演じる公安警察の存在はこの物語で重要な存在。ラストで、その存在がより一層、深い終わりのない闇へと導く。

主人公ジミーとロクも細かく人物設定がされているのが素晴らしかった。

冒頭、希望に満ちた顔からラストには青白く疲れた表情を見せるジミーの姿。時々、欲望が見え隠れするロクの表情。それが息子の後ろ姿を見ながら終焉を迎える時、最後にそこに何が見えたのだろう?と感じてしまう。

個人的に1番好きな登場人物はニック・チョンが演じたフェイ。

前作でレンゲを食べたあのインパクトは薄れていたけど、ジミーとの微妙な関係が却ってフェイの存在を面白く映していたし、最後に名刺を捨て立ち去る場面に救いを感じた。

観終わったあと拭いきれない後味の残る映画だ。でも、よくここまで描ききってくれたと感じる。

ただ、黒社会を描いているわけでは決してない。そこには、やはり香港と大陸との微妙な構図、伝統が変わりつつある姿、それが物語に見え隠れする。

そして、それこそがジョニー・トー監督の描くテーマのように感じる。

ん、でも今回、香港版で鑑賞したんで細かい所が理解できてないのも事実。

日本語字幕がないおかげで、何度見直した事か・・・

それでも十分に面白く感じたけど、ちゃんと日本語字幕があれば、さらに面白さ倍増なんだけどなぁ・・・

第一、前作とこの続編でひとつの物語なんだから、前作だけDVD化されても困るというか、この続編も日本版DVD化しないと意味がないんだが・・・

っという事でこの「黒社會2以和為貴」の日本版DVD化をかなり希望。

2007年/香港

監督:杜?峰(ジョニー・トー

出演:任達華(サイモン・ヤム)/古天樂(ルイス・クー)/張家輝(ニック・チョン)/林家棟(ラム・カートン)/林雪(ラム・シュー)/安志杰(アンディ・オン)/張兆輝(チョン・シウファイ) /鄭浩南(マーク・チェン)/尤勇(ヨウ・ユン)/王天林(ウォン・ティンラム)