HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

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【 映画 】セデック・バレ 第一部 太陽旗 / 賽德克·巴萊

セデック・バレ2

 

 

STORY

台湾中部の山岳地帯に住む誇り高き狩猟民族・セデック族。その一集落を統べる頭目の息子モーナ・ルダオは村の内外に勇名をとどろかせていた。1895年、日清戦争で清が敗れると、台湾の主権が日本へ委譲されたことにより、先住民であるセデック族も日本人の開墾の労働者として扱われるようになっていく。それから35年、頭目となったモーナは依然として日々を耐え抜いていた。そんな中、日本人警察官とセデック族の一人が衝突したことをきっかけに、長らく押さえ込まれてきた住民たちが立ち上がり……。(movie walkerさんより抜粋)

 

REVIEW

 

桜坂劇場にてセデック・バレ 太陽旗」第一部、「セデック・バレ 虹の橋」第二部、鑑賞。監督は「海角七号 君想う 国境の南」のウェイ・ダージョン監督。

 

監督が長年の月日をかけて完成した作品。

第一部、第二部と構成されており合わせて4時間38分と長い。

この長い映画を1日で鑑賞するに当たって、途中で集中力が切れずに鑑賞できるか不安を感じたが第一部冒頭から物語に入り込め、あっと言う間に時間が過ぎていった。

 

 

物語は日本統治時代の台湾・霧社で実際に起きた「霧社事件」を題材に描かれている。

最初から最後まで衝撃的な描写の連続、日本と台湾の時代背景、少数民族であるセデック族の誇りと威信をかけた戦い、物語は時に残酷で容赦ない。

 

第一章は、日本に統治され植民化されたセデック族が日本軍に半旗を翻すまでが描かれている。

因にセデック族はとは台湾中部の山岳地帯にいる自然と共存し虹を信仰する一方で”出草”(しゅっそう)と呼ばれ戦った相手の首を狩る風習も持つ。少数民族であるがその中にマヘボ社、タウツァ社、ホーゴー社などこれまた細かく部族が分かれていて、その間で縄張り争いも起こしている。

 

そういった背景が第一部の前半部分が丁寧に描かれており、この映画の主人公であるモーナ・ルダオはマヘボ社に属し、後にタウツァ族のタイモ・ワリスとのしがらみも描かれる。

  

自然と共存し、他部族の侵入を許さないセデック族の残虐にも見える外敵への容赦のない”出草”という行為、これは現代に生き平和に暮らすわしにとってはもの凄く驚くべき描写でもあった。一見、「野蛮」に映るその場面は見終わった今でも理解することは出来ない。だが物語を見つめていくうちに彼らの紡いできた生き方が少し伝わる。

 

そして日本軍が台湾を統治する時代がやってくる、日本が軍国主義で力のあった時代、抵抗重ねるセデック族であったが服従することになる。彼らの葛藤が渦巻く。

前半あれほどまでに誇り高い戦士だった主人公モーナ・ルダオもその中で何年も燻り続ける。

日本統治が行われた場面はセデック族も一見、教育も受けられ、仕事を与えられ、日本語も覚え近代的な発展に映る。

だがその背景には主従関係があり、労働を強いられ彼らを日本人教育を受けさせるが彼らの文化や風習を禁じた。それよりもその状況に屈してしまった葛藤が強く印象に残る。

 

統治時代の永きに渡り、35年の月日が流れる。セッデク族にも子供の頃から日本の教育を受け、日本名を与えられ警官になる青年も出てくる。日本名、花岡一郎/ダッキス・ノービンと花岡次郎/ダッキス・ナウイ、この二人は日本の教育を受け警官となる、だが優秀ながらも日本人警官の下っ端という扱いをされる。セデック族というアイデンティティを持ち、その間で揺れる立場である。

 

第一章はその背景からある事件をきっかけにセデック族が日本人を大量虐殺するまでを細かに描いてる。

主人公モーナ・ルダオの力強さに圧倒され、タウツァ族との長期に渡りそうな敵対の場面もスピード感のある描写で物語に入り込める。

前半のセデック族の背景を描いてる部分は正直、凄い民族だなーとか他人事のように見えてしまうわけだけど、日本軍が侵入するあたりから、もはや他人事ではなくなる感情が湧いてくる。

 

日本に統治され、その間でもマヘボ社とタウツァ族は敵対しているわけだが、そこに小島源治の息子が言う台詞が印象に残る「ここはマヘボ社のものでもタウツァ族のものでもない、僕(日本人の)ものだ」とセデック族に良心的な小島源治であるがその息子のその概念にショックを受けてしまう。

 

そして花岡一郎がモーナに問われる場面「お前は死んだら神社(日本人として)に祀られるのか?虹の橋(セデック族として)を渡るのか?」

 

そして見続けていくうちに私自身の心にも葛藤が生まれ、もうどの立ち位置でみても救いのない感情に苛まれる。でもこの物語の顛末を観ないわけにはいかなくなった。

 

それでも日本人大量虐殺の場面は恐ろしい感覚が襲う。女子供一般人容赦なく残虐の限りをつくすセデック族。その背景は理解があれど、やはり目を覆いたくなる。

そうやって第一部は幕を閉じ、私自身、茫然自失となった。それでも目を離せずにはいられない映画でもある。

 

続きは第二部

 

 

2011年 台湾製

監督:ウェイ・ダージョン

出演:リン・チンタイ、ダーチン、マー・ジージアン、ビビアン・スー、ランディ・ウェン、木村祐一河原さぶ田中千絵、春日純一、安藤政信