HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

鬼が来た!/鬼子来了

鬼子来了

STORY

第2次世界大戦が終結に向かっていた1945年の旧正月直前、中国・華北の寒村、掛甲台(コアチアタイ)村。ある深夜、青年マー・ターサンのもとに”私”と名乗る男がやって来て、マーに拳銃を突きつけ、麻袋を2つ押しつける。麻袋の1つには日本兵が、もう1つには通訳の中国人が入れられていた。”私”はマーに、それを晦日まで預かるよう脅し、供述書も取れと命じて去っていく。日本海軍の砲塔が建つこの村で、日本兵を家に置くなど危険極まりない行為だったため、村人たちは殺してしまうか、日本軍に引き渡すか話しあうが、晦日まであと一週間もない。それまでこの2人を隠すことになった。

REVIEW

何度見ても、凄い映画だなぁと思う。

モノクロで描かれた世界、それに伴う臨場感、スピーディな展開に緊張も走る。

日本占領下時代の中国を背景に描かれた作品。

戦争というのが愚かであることは、当たり前だ。わしの世代ではとうに知った事である。でも、それでも戦争を体験したことのないわしらが知らない現実が山ほどある。

物語は、2つの麻袋に入った日本兵とその通訳が届けられる事から始まる。

日本占領下にありながらも比較的、平和に暮らす村はこの存在から、ざわつき始める。そこからの物語クライマックスまで緊張感を醸し出しつつユーモアが効いて笑いもある。

主人公マーの焦り、村人の間抜けさ、花屋の愚弄な姿、日本兵の横柄な態度、それぞれが物語に深い関わりを持って展開する。

緊張と緩和、それが良い具合に繰り返され、長い物語を感じさせない展開。

そして、最後はまさに衝撃的である。日本人としては目を背けたくなる場面に驚愕し、呆然となる。

さっきまで、笑いあっていた人が鬼と化す姿にガツンとやられる。痛みを感じますた。でもこのクライマックスを見て、これが戦争の世界なんだと感じる。

凄いのは、人間を多面的に映し出す所。主人公であるマーにも花屋にも、村人にも、日本兵にも優しさや狡さ、今を生き延びていくための生き方が映し出されている。

時に情けない姿を映し出す背景に、戦争という極限状況だからこそ人は生きるため貪欲で人だからこそ鬼になるんだと感じた。

この映画は戦争映画としてだけを捉えるには浅はかな気がする。

物語の側面に戦争という状況下における人の滑稽さ、痛み、弱さをまざまざと見せつけてくれた。そういった負の感情をリアルに、時には笑い飛ばすように力強く描かれていた。でも、その姿は現代に生きる我々の持っている感情でもある。その距離感が映画と現実を繋いでいて実に臨場感が湧きますた。

主人公マーが見たあのカラーの世界、最後に何を感じたのだろう?それを考えずにはいられない。

2000年製作/中国

監督:姜文 (チァン・ウェン)

出演:姜文 (チァン・ウェン)/香川照之/姜鴻波(チアン・ホンポー)/袁丁(ユエン・ティン)/陳述(チャン・シュ)/澤田謙也