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【 映画 】セデック・バレ第二章 虹の橋 / 賽德克·巴萊

セデック・バレ1

 

 

STORY

連合運動会が開かれていた霧社公学校を襲撃したセデックの決起部隊の手によって、戦う術を持たない多くの日本人は女子供の区別なく命を奪われた。日本軍は直ちに鎮圧を開始。だが、山岳地帯の地の利を活かして戦うセデックの前に苦戦を強いられるも、圧倒的な武力を誇る日本軍と警察を前に、セデックの戦士たちは追いつめられ、一人また一人と命を落としていく。男たちが絶望的な戦いに挑むなか、セデックの女たちもまた選択を迫られ、それぞれが信じる道を選ぶことに。決着のときは近づいていた……。(movie walkerさんより抜粋)

 

REVIEW

 

セデック・バレ第二部虹の橋の感想。第一部「太陽旗」を見終わって茫然自失となったわけだが、30分後に第二章が上映。その間、色々と考えさせられる。その気分を味わったまま第二章へ突入したのだが、後編は更に過酷な描写のくり返しとなる。

 

なんだかんだ重い題材を引っさげつつ、映画はド迫力満載でエンターテイメント性も感じられる。

それくらいで良いと思う。複雑な構成も戦闘シーンの描写は恐ろしくも見応えがるのも入り込める状況だから。そういうのも映画として必要だね。

 

 

一見、日本人排除が成功したかにみえセデック族は尊厳を取り戻し歓喜に包まれる。だが生き残った日本軍によってその事が明るみになった日本政府は陸軍少尉、鎌田弥彦が率いる部隊を派遣。

当初はすぐ鎮圧できるだろうと考えた鎌田だったが地の利を生かしたセデック族の攻防に苦戦を強いられる。

だが徐々に圧倒的な軍事力に窮地に追いやられるセデック族の姿が描かれていく。

 

もうね、だんだんと苦しくなっていくわけですよ、観ているこっちまで。

セデック族の男たちは尊厳を取り戻すための戦い。だけどセデック族の女たちは何故こんな事をしたのかと苦しむ。だけど、セデック族の誇りもある女たちでもあるわけで。。。

苦戦を強いられていくうちに次第に食料とかなくなっていくのを知っている女たちは少年兵士であるセデックの子供たちに食料を運ばせ、女たちは自害の道を選ぶわけ。こっからはもう涙腺崩壊。

 

第一部から出てくるバワン・ナウイというセデックの少年がいるんだけど、彼も日本人の子供たちと比較され蔑まれた少年で日本人虐殺の時は日本人の先生や子供たちを殺していくわけです。セデックの子なのでセデックの尊厳や風習を受け継いだ彼ですら自分を育てた女親の自決の時は泣き叫ぶ。

 

セデック族は敵に降伏するなら自決を選ぶ。日本軍の力によって仲間を失い、力の無いものは自害と言う道を選ぶ。

その描写にショックが隠しきれなかった。

 

そして良心的な日本人であった小島源治も先の日本人虐殺で妻と子を亡くし、モーナの宿敵タウツァ社のタイモ・ワリスを強制的に出兵させる。ここもねぇ、小島とタイモは日本人とセデックの垣根を超えて友情みたいなものが生まれてたんだよ。小島はセデックを下に見ない人だったんだけど、虐殺によって心が鬼になってしまう。一方のタイモもモーナとは敵対してるが日本軍のやり方に疑問を持つようになる。

 

 

 

また花岡一郎、次郎もセデック族の尊厳を懸けて日本人虐殺に協力するのだが、彼らは日本人の恩恵を受け、日本路として生きてた立場の人間なんだよね。彼らも自決するんだけど、二人の最後の会話が苦しい。

一方が「俺たちは天皇の子か?セデックの子か?」と問いかけ、もう一方が答える「葛藤を切り裂け、自由な心になれ」と。。。もうどうする事もできず自決の道を選ぶ彼らは死してやっと自由になれたのかと、この場面は何とも言えない感情がわき起こる。

 

負け戦とわかっていても戦い続けるセデック族、尊厳と心の葛藤を埋めるように命を懸けていく

桜吹雪に見えるあの赤い紙をもってしても、かれらは誇りを失わない。

あたしは日本人虐殺の場面も、投降せず自決の道を選ぶ事の感情もやっぱり理解に苦しむ。

だけど、それは私がこの国に生まれ平和な時代を生きている証拠だ。

 

それぞれが疲労困憊しながら戦いは繰り広げられていく。

だけど、その時々で流れる民族の歌、そして壮大な自然、これがセデックの生き方だったんだ少しだけ解る気がする。

 

 だからこそ、この映画の残虐な部分も絶望も見なきゃいけないと感じた。

この映画は公開前、抗日映画という人もいた。そんな一言で終わるものではない。

人間の尊厳と誇り、そして命の価値を問う映画だと思う。

 

 

この映画を作るにあたって監督は1997年から長い歳月を懸け、完成させた。

台湾、香港、韓国、日本それぞれのスタッフが集結し着手している。映画出演者も少数民族から選び、丁寧な脚本のもと作り上げた。

何よりウェイ・ダージョン監督のこの映画に懸ける執念に脱帽。

ここ数年であたしの中で大きな衝撃を受けた一作。

 

 

2011年 台湾製

監督:ウェイ・ダージョン

出演:リン・チンタイ、ダーチン、マー・ジージアン、ビビアン・スー、ランディ・ウェン、木村祐一河原さぶ田中千絵、春日純一、安藤政信