HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

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冷たい雨に撃て、約束の銃弾を/Vengeance 復仇

復仇

STORY

マカオに暮らす愛娘の家族を何者かに殺された初老の男・コステロ(アリディ)は、重体の娘から犯人の手がかりを聞き出し、復讐を誓う。コステロは偶然出会った殺し屋3人組に、犯人を探し出し、暗殺するよう依頼するが……。

復仇2

REVIEW

ジョニー・トー監督の『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』をもうすでに5回ほど鑑賞してます。なのに邦題が長くて覚えられましぇん!!てことは置いといて・・・

個人的に公開される前から期待値が高かった作品。結局劇場では観れる機会がなかったけど、DVDで観まくっております。

物語は家族を殺された男の復讐劇。復讐を誓った主人公は昔の銃弾が元で記憶を失いつつある。3人の殺し屋を雇い犯人を探し始める。っとまぁ話の流れは大体そんな感じ。

ですが、さすがジョニー・トー先生と言いましょうか、そこはもう銃撃戦とともに男の美学、世界観が炸裂しております。

ひとつひとつの場面がまるで切り取られたアートのような痺れる演出。中盤の森の中で見上げる月、薄れていく記憶で写真をみながら仲間を探す雨の中の主人公、クライマックスの銃撃戦のゴミの固まりさえも、この映画の中では必要不可欠な演出。

単純な復讐劇なのに、すぐに物語に引き込まれるのはこの演出と出演者の成せる技でしょうね。

3人の殺し屋であるクワイ(黄秋生)、チュウ(林家棟)、フェイロク(林雪)と主人公、コステロのとの距離感も絶妙だなと思う。ただの雇われた殺し屋と依頼主という関係性でなく、そこに信頼や友情が生まれてくるとことか、やっぱこういう世界はジョニー・トーにしかできない旨さがある。

あと、コステロが撃たれたあと応急処置で弾を抜くというシリアスで痛そうな場面で同時にお尻の弾を抜かれるフェイロクの存在がかなーり好き。あれは緊張感を解きほぐすための一種の緩和剤ですた。だから次の場面でまた緊張が生まれる。

ジョニー・トーの演出の旨さは小道具もそうだけど、緊張と緩和のタイミングや人間関係の絶妙な距離感が見る側をくすぐるかもしれないと、この作品で再認識した。

復讐を忘れたれた主人公、そのために回してはいけない相手を敵にし、忘れたからといっても約束を守る男たち。もう、主人公が復讐を忘れたあたりから胸がぎゅうとなる。

んで、回してはいけない敵を演じたのはサイモン・ヤム。やっぱり怪演。

この人は秋生さんですら行けない領域に達したかも知れない。悪くて不気味でエロいってのは最強かも。

不気味な笑みを浮かべるところとか、ゾッとする。巧いとか下手じゃなくて、強烈という印象なんだよね。

物語で3人の殺し屋が思った以上に消えたときには、どうオチをつけるのだろうと思いきや主人公コステロが一人で復讐に立ち向かう。記憶を失いつつあるコステロにどうやって復讐を遂げさせるのかとハラハラしていたら、そこは巧く見せてくれたなーと感動したね。

あのシールの使い方といい、銃に書かれた名前といい、コートの使い方といい、もうそこまで見せてくれると感動もんですた。まして主人公が記憶が曖昧だからこそ、最後の復讐に切なさがこみ上げる。

もう最初から最後まで唸りっぱなしですた。

今回、大収穫だったのはラム・カートンがかなり振り幅の広い役者さんになった印象を持ったこと。個人的に、凄くいい俳優さんになったなーと思いますた。

あとね、思った以上にコステロを演じたジョニー・アリディがよかった。うまく表現できないけど、いつものジョニー作品と良い意味でちょっと違う

映画全体を観て思ったのは今回は悲壮感漂うなかにも、なんだか優しさが感じられる作品だなぁと思いますた。最後に子供たちと笑う主人公の笑顔がもうなんとも言えない感情を起こす。

ここでは語りきれないくらい他にも印象の残る場面が多い。

やっぱり、何度観てもいい映画は良いと感じる映画ですた、ハイ。

原題:Vengeance 復仇

製作:2009年 香港・フランス合作映画

監督:杜琪峰(ジョニー・トー

出演:ジョニー・アリディ、黄秋生(アンソニー・ウォン)、林家棟(ラム・カートン)、林雪(ラム・シュ)、シルビー・テステュー、任達華(サイモン・ヤム)