HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

ひとめ惚れ/一見鐘情

一見鐘情

STORY

サンフランシスコで10歳の息子と暮らすシングルマザーのエレン(マギー・チャン)は、金曜の夜タクシードライバーとして会社の経営者でもある親友のティナ(スーキ・クワン)の誘いでバーに出かけ、同じ香港人のマイク(レオン・ライ)と出会う。従兄のボブ(エリック・コット)と会社を経営している天才プログラマーのマイクは、負債の返済を新作ソフトの開発にかけている最中で、その息抜きにバーへ夜遊びに来ていたのだった。エレンは、マイクたちの他愛ない遊びに付き合うが、楽しい一時は久々に彼女の心をときめかせた。帰宅途中エレンは、自分が描いた壁の絵に向かって立小便をしているマイクと遭遇する。芸術地域サウサリートに引っ越すことを目標にしている画家志望の彼女はむっとするが、初対面で互いに惹かれていた二人は、エレンのタクシーの中で関係を持ってしまう…。

REVIEW

この作品「一見鎮情」とピーター・チャン監督の「ラブソング」、マギー・チャン&レオン・ライのコンビ、アメリカが舞台、そしてすれ違う恋愛模様と共通している点があって、つい見比べてしまいがち。

「ラブソング」のあのもどかしく切ない世界感はラブストーリーとして本当にいい作品だと思う。この作品は恋愛映画として特に素敵だなぁと思えるまではいかないけど、主人公エレン(マギー)の等身大の姿とか凄く共感できて、そして重過ぎない雰囲気のノリがよかった。

・・・というより、30代入った今となってこの作品を観るとかなり好きかも。

マギーが演じるシングルマザーのエレンは子育てと仕事、そしてアーティスト志望で壁画を描いている日々。恋愛事は自分にとってもう遠い存在となってる。そんなエレンはバーで知り合った男マイクと一夜を共にし、お互い相手の事が気になるけど、前に進めない。

それは若い頃の純粋な気持ちからではなく現実を見据え恋愛だけで生きていけるわけではない大人だからだと思う。

エレンは恋愛も遠い過去の存在となっていたし、マイクは恋愛関係になるのを煩わしいと感じている。そんな二人だから距離が近づいたかと思うとまた離れてしまう関係になってしまう。

だけど、二人はどんどんお互いを意識していくんですねぇ。その展開や心情は淡々と描いていて、物足りなさを感じてしまう。だけど、そこが却って自然に感じる。だからこそ、エレンの気持ちに共感してしまうんだよなぁ。

物語の中盤でマイクはエレンが鬱陶しく感じ始め、従兄弟ボブの事をエレンにギャングと偽る。それが嘘と知った時、彼女はマイクに対して失望の表情を浮かべる。

プライドを傷つけられたエレンの姿に何だか、こちらにまで痛みが伝わるようだったし、今まで気持ちの中ではエレンがマイクを追っかけていたのに、この場面からマイクがエレンを追うようになるのが面白かった。

でもね、主人公以外の登場人物の描き方が少し弱い気もするんだよね。

リチャード・ンが演じるマイクの叔父の描き方、その存在は上手く描かれていると思う。この叔父の存在は凄くよかったし、色々な愛の形を描くには持って来いの存在だったように思う。

ただ、レオンの従兄弟で相棒のボブの存在、エレンの子供スコット、投資会社の女、エレンの友人とキャラクターとしては結構魅力的な存在にもかかわらず、そこがちょっと雑に描かれているような気がしてならない。

あと、最後あたりでギャグ?のようにエレンが集団に追っかけられる場面、あれは今までの雰囲気がガラガラーっと崩れるような流れだよなぁ・・・

まぁそこは香港映画らしくって嫌いではないけど。

でもあの場面でエレンがマイクを受け入れていたら、ただのシンデレラストーリーだった。でも、ここでエレンは一度マイクを突き放す。

だけど窮地に陥った時、マイクが大切な存在に気づく。マイクの地位や、自分の生き方とかそうじゃなく、ただ単純に彼が大切な存在と言うことに気がついたんではないかなぁ。

久々に鑑賞すると恋愛映画としていいと思った。

一見シンデレラ・ストーリーにも見える。でも、エレンもマイクも地位も立場も違えど、仕事に悩み、生き方に悩む等身大の人間を描いてそれが魅力的だった。

物語に大きな起伏があるわけではない、物足りなさも感じる。でもこのシンプルな恋愛模様こそが現実的で、30代の恋愛がリアリティを増す。そこが個人的に好きですた。

2000/香港

監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ

出演:黎明(レオン・ライ)/張曼玉マギー・チャン)/關秀媚(スーキー・クワン)/葛民輝(エリック・コット)/呉耀漢(リチャード・ン)