HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

ドッグ・バイト・ドッグ/狗咬狗

狗咬狗

STORY

香港の高級レストランで起こった殺人事件。ベテラン刑事リン(ラム・シュー)と若手刑事ワイ(サム・リー)は犯人の殺し屋、パン(エディソン・チャン)の元に辿りつくがパンは人質をとった挙句、人質もリンも容赦なく撃ち殺す。危機を脱したパンは逃亡のさなか、ユー(ペイ・ペイ)という名の女の子に出会い恋に落ちる。ユーを連れて故郷のカンボジアへと逃れるパンだったが、復讐に燃える刑事・ワイもまた彼を追ってカンボジアへやってくる

REVIEW

こういう映画を観ると、色んな感情につままれてしまう。

終始、胃がキリキリする展開で、思わず目を背けたくなるような場面もある。

暴力描写がエグくて、暗い作品だった。でも、物語に凄く入り込めますた。

で、サム・リーが久々にまともそうな役かなっと思ってみたら、かなり荒々しい刑事ワイを演じていて、サムに対する印象がガラリと変わった(いい意味で)。しかも、カンボジアからのサムの豹変には度肝を抜く。

凄いというか、今までは荒々しくとも、どこか甘ちゃんだった刑事が全てを失った時、あの復讐に燃える表情に緊張感が湧きますた。

エディソン・チャン演じる青年パンは終始、言葉少なく闇を抱えた男を演じてますた。やっていることは非情で最悪なんだけどパンの背景が深く悲しくて、許せない感情と共になんとも物悲しい感情が入り交じってしまう。

そんなパンとワイの姿がまさに狗が狗を咬むという展開で目が離せない。

物語が面白くなり始めたのは、パンが少女ユウと出会ったあたりから。

そのユウの背景も深く悲しい。そして、このユウの存在が健気で悲しくて泣ける。

何一つ救いようがなく、物語が進むにつれ最悪な展開に転がる。

そして、パンとユウのカンボジアでの一時の穏やかな日々、だけどすぐにそのひとときは緊張へと変わる。

そしてラストのパンとワイの死闘にハラハラさせられっぱなしですた。

この映画はバイオレンスアクションって位置づけだけど、人物背景が上手く描いていて、それが物語に深みを出しているように感じますた。

カンボジアで生きるために人を殺し続け、いつしかそれを何とも思わなくなった男、ある事がきっかけで自暴自棄になった刑事、不法滞在で母の死をきっかけに父親に奴隷のように扱われる女。

その刑事は何もかも失なった時、復讐の狂犬となり、人を殺し続けた男は女と出会い人間としての感情が芽生えた時、その女のために命を懸ける。その構図がまた何とも言えない感情を沸き起こす。

そして、女の最後の姿にもう涙が止まらなかった。

きっと主役の力演と主要登場人物の闇を上手く描いたからこそ、映画に入り込めた気がする。

物語はずっと暗い。緊張感に包まれ、闇はより深い闇へ行くようですた。

だから最後に残された存在に未来はあるのだろうか?と考えてしまう。

でも、希望であって欲しいと願わずにはいられない。

それにしても、サムの豹変ぶりは怖すぎです・・・

2006年/香港

監督:鄭保瑞(ソイ・チェン)

出演:陳冠希エディソン・チャン)、李燦森サム・リー)、裴唯螢(ペイペイ)、張兆輝(チョン・シウファイ)、黎燿祥(ライ・イウチョン)、林雪(ラム・シュ)