HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

英雄 HERO/英雄

STORY

後に始皇帝と呼ばれることになる秦王(チェン・ダオミン)のもとに現れた1人の男。無名(ジェット・リー)と名乗る男は、中国全土でも最強の暗殺者、長空(ドニー・イェン)、残剣(トニー・レオン)、飛雪(マギー・チャン)を討ち果たしたと語る。秦王は、この知らせを聞いて無名に謁見を許す。暗殺者たちとの激闘を語るうち、一歩ずつ王に近づいてゆく無名。彼の胸中には、恐るべき思惑が秘められていた……。

REVIEW

この映画、今回で観たのが2回目、ようやくレビューを書くことができますた。

やっぱり、チン・シウトンのアクションとクリストファー・ドイルのカメラワーク、衣装で華を作るワダ・エミ、そして映像美に定評があるチャン・イーモウとこれだけのメンツが揃えば、この作品の世界観に圧倒されるわな。

そしてこの豪華な役者たち、それだけで観る価値があるでしょう。

冒頭の碁会所での無名(リンチェイ)VS長空(ドニー・イェン)のアクション。10年ぶりの共演って事がわし個人として嬉しいし、さすがアクションスターだけあってキレのある動きは興奮もの。でも、もうちょっとドニーの出番があってもいいのでは?とも思いますた。

しかしストーリーが色で表されている所なんて、鮮やかでだけど上品で、赤の虚構、藍の回想、緑に過去、白の真実、そして無名と皇帝を表す黒と表現していて、それは全てが切ない内容だった。何か凄くわし好みで物語に入り込めますた。

そして“赤のストーリー”での飛雪(マギー)と如月(チャン・ツィー)の対決もちょっとスローモーション多すぎな感じはしましたが、枯れ葉が金色から赤に変わる美しい映像に感動し、緑の場面での皇帝(チェン・ダオミン)VS残剣の時の流れるような布の動きもかなり素晴らしかった。そして“藍のストーリー”の無名と残剣(トニー)の水面での手合わせは美しい背景といい水の動く表現といい、とにかく印象が残るシーンだった。そのロケ地である九寨溝では水面の波が立たない時間が午前中の2時間しかなく、何日もあの手合わせのシーンに時間を費やしたとか。その甲斐あって凄く美しい情景とアクションが融合していますた。もうその映像の美しさ言葉にならないほど。

また、マギーに信じて欲しいため身を投げ出すトニーの姿が切なかったし、そのトニーが演じた残剣の心を知った皇帝や、「剣」という書にしたためられた真理を見いだした皇帝の姿を見て、暗殺を止める無名の想いに「義」の心を感じますた。

前回観たときはその映像の美しさや華麗なアクションに目を奪われたが、結局のところ、「じゃあ無名の存在は何だったんだ?」と思った。だけど、無名という存在は確実に皇帝の心に平和を導き出したし、今回観たときはこの映画のメッセージ性というか、本質を感じる事が出来たような気がします。

一回目に感じた事は、「英雄とは誰なのか?」それとも、残剣、長空、飛雪、如月、皇帝そして無名その全ての人物が「英雄」なのか?と問答し続けました。そして今回、鑑賞して思ったのは「英雄とは誰か?」と言うことより「英雄とは何か?」という考えに行きついてしまいますた。

従来の勧善懲悪な英雄像を描いている映画では決してなく、観る側にとって「英雄」というものの存在意義を感じる事ができる作品だとも思う。

メイキングのインタビューでジェット・リーは「英雄はいらない」と答えている。それは、英雄のいる時代には争いが絶えないからだと述べていた。その考え方は真理だなぁと思う。

この映画も無名という刺客と皇帝の駆け引き、その流れにあるストーリーに心を奪われがちだけど、その本質は平和を問う心や大義を描いている。わしはそこにこの映画の「英雄」という姿が描かれていたように思う。

これだけ豪華な役者を観れたのも嬉しいし、一度観たときよりも二度観て感動できるなんて嬉しいなぁと感じますた。あと、チェン・ダオミンが異常なほど格好良くみえてクラッときますた。そして、メイキングを観るともっと感動すると思います。

2002年/香港・中国

監督:張芸謀チャン・イーモウ

出演:李連杰ジェット・リー)/梁朝偉トニー・レオン)/張曼玉マギー・チャン)/章子怡チャン・ツィイー)/甄子丹(ドニー・イェン)/陳道明(チェン・ダオミン)