HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

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私の胸の思い出/天生一對

天生一対

STORY

広告会社に勤めるやり手の独身キャリアウーマン、ビンゴは、ある晩、バーで知り合った精神科医のヴィに、乳房に“しこり”があると指摘される。そして診断の結果、乳がんと分かり大きなショックを受けるビンゴ。まだ若い彼女には、なかなか手術に踏み切ることが出来ず、漢方や民間療法に一縷の望みを託すのだったが…。

REVIEW

以前から観たかった『私の胸の思い出』を鑑賞しますた。

主演はミリアム・ヨン、リッチー・レン

物語は主人公のキャリアウーマン、ビンゴ(ミリアム・ヨン)が、乳がんとなり手術に踏み切るまでを描いていますた。

病気を題材にした映画だったので、重い内容だったら気が滅入りそうだなぁなんて思っていましたが、暗いイメージは寧ろなく、心が軽やかになるような内容。

テンポがよく、前向きに描かれているのも、好印象ですた。

何と行っても主人公のビンゴのキャラクターがよかった。

ある程度の地位も確立していて、女性としてこれからって時に乳がんで乳房を切除しなければならなくなった主人公が葛藤する姿に共感が得られますた。

勝気で元気があって、だけど癌になってすべてを失うかもしれないと感じる恐怖心と戦いながら友達や職場ではいつものように過ごす。

自分の運命をコインに賭けるんですけど、裏でも表でも良い結果になるようにする。そこが逆にビンゴの現実逃避と不安が表現されていて印象的。そして、妙にリアルさを感じる。

結局、昔の恋人の裏切りがあったり、仕事がうまく回らなくなって自棄になってくるんですねぇ。で、自殺を図ろうとするんですけど、そんな状況でも気が強いというか、生命力を感じるタイプで見ているこっちが応援したくなるようなキャラですた。

主人公ビンゴと一夜を共にしようとして、乳がんを発見したヴィ(リッチー・レン)はその事がきっかけでビンゴに変態扱いされ、しかも不能になる。んで、心理療法士らしく行動療法といい、不能になったキッカケであるビンゴにつきまとうんですが、元々世話好きという性格のため自分の治療よりビンゴに構ってしまうんですね。

ヴィのキャラクターが癒し系というか、大人としての優しさを感じる男で魅力がある。

ヴィを演じたリッチー・レンは、タイプじゃないのにスクリーンでみると本当に魅力的なキャラクターを演じるので、どの役を見ても最後は好きになってしまうんだよなぁ。

ミリアム・ヨンは個人的に大好きな女優さんなので、いつ見ても安心して見れる。

コメディエンヌなイメージだけど、この人がふと見せる泣きの表情に心が動いてしまう。

この作品でも、主人公ビンゴが自棄になって赤ん坊の広告を見て泣く場面や、駅のホームで涙を流す場面があるけど、すごく印象的で感情がこちらにも流れてきた。やっぱ、ミリアム・ヨンっていいなぁと思ってしまう。

この二人のキャラクターが少しずつ距離を縮めあって行くところが自然に描かれていてよかったです。お互いの質問したいことをレストランの紙ナフキンに書く場面にグッときますた。

また、物語に出てくる主要なキャラクターが30代なので、大人の距離感を感じる。

また、私も年齢的に乳がんというテーマには非常に敏感なので、やはり女としての体の一部を失う怖さとか、不安を主人公を通して見ることができるのが共感できた。

あと、主人公ビンゴのせいで自信を失った歌手志望のシンビンを演じた側田の歌声が物語に合っていて、切ない場面で凄く効果的に響いた。やっぱ、抜群だね歌唱力。

その側田はこの映画が役者デビューという事ですが、なかなか印象深いキャラクターなのがよかった。

側田が演じた役だけでなく、その他のキャラクターもなかなか良くて、ビンゴの周りのキャラクターも結構きちんと描かれているのも物語を面白くさせている。

また、製作がジョニー・トーなので、ジョニー組の役者が脇を固めていて安心できる。

監督はジョニー監督の右腕である羅永昌(ロー・ウィンチョン)。

この作品が初監督ですが、さすが長年ジョニー監督と共にしただけあって初監督作なのにクオリティが高い。

脚本も『ラブソング』の女性脚本家、岸西(アイヴィー・ホー)ということで、女性ならではの着眼点はさすがですた。

観たいみたいと思いながらも、病気がテーマの作品だったのでなかなか手にとることが出来ませんでしたが、いざ観賞すると”泣き”を狙ったイヤらしさがなく、寧ろ心が清々しくなるようで、思った以上に良かったと思える内容ですた。

女性だけでなく、男性にも見て欲しいなぁと思いますた。

秀作です、ハイ。

2006年/香港

監督:羅永昌(ロー・ウィンチョン)

出演:楊千嬅 (ミリアム・ヨン)、任賢齊リッチー・レン)、側田 (ジャスティン・ロー)、林家棟(ラム・カートン)、谷祖琳 (ジョー・コク)、郭濤(グオ・タオ)