ウォーロード 男たちの誓い
STORY
19世紀末。アヘン戦争で腐敗した清朝の圧政下、太平天国の乱が沸き起こる。
味方の兵を全て失った将軍パンは失意のうちに彷徨っている時、2人の盗賊アルフ、ウーヤンに出逢う。2人と共に義兄弟の契り=【投名状】を結んだパンは、太平天国軍を次々と倒し、遂に南京を攻略。西太后からも厚い信頼を得、功労を讃えて金の官服を授かると共に、両江の総督に取り立てられる。しかし、来るべき新しい国のため闘うパン、ひたすら仲間のために闘うアルフ。2人の溝は深まり、想いも寄らない悲劇を巻き起こす。それは逃れられない運命だったのか。純粋に2人の兄への友情のために戦って来たウーヤンが下した決断とは…。
REVIEW
超久々のレビューになります。
この作品は沖縄でも劇場公開だったので6月頃劇場へ足を運びますた。
この映画はチャン・チェ監督の「刺馬(ブラッドブラザーズ-刺馬)」をピーター・チャン監督がリメイクした作品
出演者もジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武、シュー・ジンレイと豪華なキャストで、結構楽しみにしていた映画のひとつですた。
でも、この映画って日本人に理解できる背景ではないと思うんだよねぇ。「太平天国の乱」って馴染みが薄いんではないかと…
時代背景がわからないとちょっと物語が把握しづらいのでは??と感じますた。
物語は一度、落ちぶれた将軍パン(ジェット・リー)が盗賊のアルフ(アンディ・ラウ)とウーヤン(金城武)に出会い義兄弟の契り『投名状』を結び這い上がっていく様を描いていて、その中にある裏切り、葛藤が上手く描かれていたと思う。
物語が進むにつれ、将軍パンは徐々にカリスマ性を発揮し、そのパンにウーヤンは傾倒していくんですねぇ。アルフは情に厚く基本優しい男なので、パンの非情な決断や考え方に理解できなくなっていく。
アルフとパンの間に徐々に生じていくズレが展開として良かった。
アルフ、パン、ウーヤンの心に溝ができ物語は悲劇へと向かうわけですが、その過程がうまく描かれていますた。
その3人の男、特にアルフとパンの間で揺れるアルフの妻リィエンがこれまた罪な女なんだよね。パンに惹かれていっているのにアルフと離れる事もできず、まぁハッキリしないとういか…道ならぬ恋に盛り上がっているパンとリィエンはいいけど、それを知らないアルフが悲しすぎるというか…
リィエンというキャラクターは見ているうちににイラっとさせる女なんだよねぇ…
オリジナルの『刺馬』の妻はもうちょっと軽い女のイメージで、それも悪い女なんだけど、シュージンレイが演じたリィエンの方にイラっとしたなぁ。
チャン・チェ監督の『刺馬』はもっと軽い雰囲気で展開していくけど、この『投名状』は主要登場人物の心情がうまく描かれていたと思う。
権力に踊らされてしまう滑稽さとか空しさも描かれていた。
戦闘場面も戦略が上手く描かれていて臨場感を感じたし、何よりそこで生きていく人間の現状を描いている所に説得力もあった。
個人的には『レッド・クリフ』よりも遥かに面白いと感じますた。
…っというか、レッド・クリフは結末に向かうにつれ、へこんだし、まったくテイストが違うので比べ物になりませんが…
ただ、日本公開版はカットされているシーンがあるので、完全版が見たいですねぇ。
総合的には期待していた以上にいい映画でした。
ピーター・チャンはさすがに細かい感情を描くのが上手い。物語は悲劇ではあれど、脚本のクオリティ、俳優の鬼気迫る演技といい、残虐で非情な描写も現実味を帯びて力強く厚みのある映画だと感じた。
久々にずっしりとした映画を観ますた。
原題:THE WARLORDS/投名状 2008年
製作:香港・中国合作
監督:陳可辛(ピーター・チャン)