HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

ヴィクティム/目露凶光 the Victim

STORY

誘拐された元印刷会社社員・マー(ラウ・チンワン)が発見されたのは、ちまたで"幽霊ホテル"と噂されている、評判の廃屋だった。だが、救出されたマーは、まるで人が変わったようになっていた。事件の経緯が腑に落ちないピット(レオン・カーファイ)は、捜査の継続を決意するのだが、やがて深い闇と恐怖に誘われていき…。

REVIEW

チンワン&エイミーさんの仲良し夫婦が共演ってことで、それだけで、興味をそそられて鑑賞したんだけど、映画としても面白かったです。

ところで、とっても仲良しな夫婦が恋人同士の役って一体どんな心境なんでしょうね?。こういうとき照れが入ったりしないもんなのでしょうか??

個人的に、物語の面白さってその脚本だったりするんだけど、それとプラスして演じる役者の力量も大事なんだなぁってこの作品を観て思いますた。

メインキャストがよかったってのもあるけど、脇を固める役者も存在感があって、しっかり物語に解け合っているように感じますた。

物語は中盤までホラーの要素を見せながら展開していくんだけど、それがヒシヒシと怖さを増していくんだよね。そして中盤以降、サスペンスタッチで展開していくんだけど、恐怖心をそのままに物語が進む。

それは、見えないものの怖さじゃなく、人が道を外してしまう末路。そして、その狂気は誰でも、起こりうるんじゃないか?と感じてしまう。

マーと言う男はリストラから人生が狂い始めるんだけど、リストラなんて今の時代どこにでもある事。そんなどこにでもあることから人生が狂うことに怖さを感じた。

本来、幸せや安らぎを感じる“家”というものが、金によって壊れた形で存在するのが虚しい。

ラウ・チンワンって俳優は演技力を認められている人だけど、この映画を観たときそれ以上に見る側をその物語に引き込む力がある人だなぁと感じますた。

狂気をおびた、その存在感にとにかく目が離せなかった。

特に造幣局のシーンが凄すぎ。もうこの時点でマーという男は心が死に始めているんだなぁって感じた。そして、クライマックスで恋人エイミーが放つ一言で彼は完全に人として全てを失ってしまう。それは崩壊した人の末路。その迫真の演技に圧倒されますた。

マーが徐々に人として引き返せない側になっていくのに対して、レオン・カーファイ演じる刑事のピットは仕事人間で熱血漢。その一方で夫婦仲に悩む一面を持っている。いわゆる“人間”なんだなぁと感じる。血が通った人間だと言うことを実感させられるカンジ。

この作品はサスペンスだけど、しっかり人間を描いているように感じますた。

だからこそ、マーの存在が怖いけど虚しさも悲しみも感じる。

精神的に重くなるけれど、目が離せない展開。

そしてラウ・チンワンという役者は本当に素晴らしい役者なんだと脱帽しますた。

1999年/香港

監督:林嶺東(リンゴ・ラム

出演:劉青雲ラウ・チンワン)/梁家輝(レオン・カーフェイ)/郭藹明(エイミー・クォック)/黎燿祥(ライ・イウチョン)/許紹雄(ホイ・シウホン)