HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

アクシデント/意外

STORY

ある雨の夜、いつもどおりの鮮やかな手際で、彼らは完璧な“偶然”を装った殺しを遂行した…… はずだった。突如、全く予期せぬ別の“偶然”により彼らの計画は狂い、仲間の一人が死んでしまう。もしかしてこれは“偶然”ではなく、何者かか仕組んだ殺しなのではないか?すなわち、狙われていたのは我々なのではないか?彼らの中に疑念が渦巻く。

生き残った者の中に裏切り者がいるのではないか?…疑念は疑惑へと、加速度的に変わってゆく。そして、壮絶な復讐劇が幕を開ける。しかし、またもや想定外の自然現象が全てを狂わせる。やがて巻き起こる大惨劇。月に食まれた太陽が、街と心の闇を照射するとき、全ての真実が明らかになる…。

REVIEW

製作はジョニー・トー、監督は『ドッグ・バイ・ドッグ』のソイ・チェン。好みがわかれそうな、まぁ、どんよりとした重い映画です。

物語は完璧とも思われる4人組の殺し屋がある意外なことがきっかけに崩壊していく様を描いている。

なかなかスリリングな展開に緊張感漂いますた。

冒頭の殺人シーンはよく練られている。全てを偶然に装い殺しを仕掛ける場面は唸る。

殺しの計画と実行が、主人公ブレイン(ルイス・クー)を率いるチームの完璧な結束力を感じる。

結束力はあるがブレインという男は人を信じようとはしない。仲間であっても。

だからこそ、突発的に起きた意外なことから徐々に綻びが生じた時、猜疑心に苛まれる心情が冒頭の時の完璧さとうって代わり大きな落差に繋がって、さらに目が離せない展開になった。

主人公ブレインはそれこそソツのない動きを日常とする。移動するにもオクトパスカードも使わず現金で移動し、家の中に入る時も、出掛ける時に仕掛けておいた葉っぱで侵入者がいないかと確認をする。

それを毎日のように繰り返す。彼の用心深さが完璧な仕事を生み出す。

だが皮肉にも、その完璧主義な性質と用心深さが仇となっていく。そこに人間の愚かさが描かれていた。

物語はそれ一点のみに集約されているよう。まさに疑心暗鬼になった人間の転落が描かれている。

ただ、後半部分はやや失速ぎみなのが勿体ないかなー。あと、回収できていない所もある。

ちょっと削ぎすぎた感も否めない。

それでも、どうなるのか?と思わせる展開に目が離せなかった。

リッチー・レンが何者なのか謎めいた演出もよかったし、冒頭のおやじのほんの少しのミスの原因とか、伏線の貼りかたがよかった。

香港の昼の喧騒と夜の不気味な静寂というコントラストが更に物語を浮き立たせ、緊張感と緩和。

そして、突然の意外なラストに茫然自失となる。

ソイ・チェン監督が描く作品は人間の愚かさをこれでもかと見せつける。恐ろしく不条理で救いがない。だが、その愚かさが人間の本質でもあるという事を感じせてくれる。

サスペンスとしてはかなり楽しめますた。

2009/香港

監督:ソイ・チェン

出演:ルイス・クー、ラム・シュー、ミシェル・イエ、リッチー・レン

、フォン・ツイファン