モンガに散る
STORY
1980年代の台北・モンガを舞台に、裏社会に足を踏み入れた若者たちのきずなと運命を描いた人間ドラマ。繁華街の裏側でいくつもの組織が抗争を繰り広げるモンガの街。高校生のモスキートは、街で最高の権力を握るヨウカウ組親分の息子・ドラゴン率いる不良グループと仲良くなり、彼らとともにケンカに明け暮れる日々を過ごしていた。やがて、彼らは激化をたどるモンガの抗争に巻き込まれていく
REVIEW
台湾でヒットした「モンガに散る」を劇場で鑑賞。
台北の繁華街モンガで生きるチンピラ若者5人の友情と裏切りを描いた内容ですた
これと言って目新しい内容ではなかったんですが、主人公たちの人物描写と展開がうまく描かれていて、物語にすぐに入りこめた。
結構エグイ場面は多かったけど、それにしても拉致するシーンはちょっと怖い。アロンアルファって!!
あと、ゲタ親分がオトシマエつけた小指を箸でどかしながら食事するシーンも印象的。
痛い場面がなかなかあって、個人的には胃がもげそうですた。
胃がもげそうながらも、入り込めたのは脚本がよかったってのが大きい
登場人物も個々のエピソードもわかりやすくでも丁寧に描かれていたし、
あと、80年代って時代背景がエネルギッシュに映し出されるんだよねぇ。
あの町並みを縦横無尽に走り回るカメラがすごく臨場感を感じる。
戒厳令を軸に前半(1986)と後半(1987)で描かれているのがこの映画のもうひとつの背景を映し出しているようだった
主人公モスキートがモンク達の不良グループに入り、友情を育んでいく場面は力強く、そしてキラキラしているんだよね。学生の頃のみんなでバカやって笑って喧嘩して・・・そんな青春が色濃く映し出している。特にモスキートはずっといじめられっこだったから初めて出来た仲間を凄く大事にしていく。だからこそ、儚くみえて切なくなる
あと、モスキートと娼婦の関係がいいんだよなぁ。ふたりでイアホンで音楽を聴く場面とかふたりの距離が近づいていくところとか甘酸っぱくて、だから悲しい。
この映画でキーとなる人物は仲間であるドラゴン。彼はゲタ親分の息子で、グループのNo.1なんだけど、本当に実力があるのはもう一人の主人公であるNo.2のモンクだったりするわけです。ですが、モンクはドラゴンの時には尻拭いしながらも彼を立て彼のために奔走するんですねー。それが友情なのか、愛情なのかわからない微妙な立ち位置で描かれている。
その微妙な描き方が青春の危うさを描く意味でもよかった。
そして、モスキートとモンク達はヤクザの世界に足を踏み入れていくんだけど、そこから古いしきたりを大事にする勢力と新しい勢力で葛藤や裏切りが生まれる
さらに学生の時からドラゴン達を目の敵にしているドッグを拉致したあたりから物語は破滅に向かっていく。
それからモスキートとモンクは徐々にすれ違っていくわけですねぇ
そのすれ違いが表に出た時、あれほどまでに笑い合っていた仲間たちが悲しい結末を迎える。それが何ともいえない感覚で胸が押しつぶされそうになる
モンクはドラゴンの為に、モスキートは父のように慕うゲタ親分の為に、この親子のために最後は対立するんだけど、そこが巧く描かれていたと思う。
「ずっと、闘う意味が分からなかった。今日はもっと、分からない」
この台詞が、切ないんだよなー。
どっちも守りたかったのは同じ方向なのに、どこで何が違ってしまったのか・・・その結末に胸が苦しくなる。
そういやドラゴンを演じたリディアン・ヴォーンは「九降風」でも似たようなリーダー役だったような・・・髪型もあんな感じじゃなかったけなぁ?役柄とはいえあの髪型は嫌だ。
いい男なのに勿体ない。。。
っとまぁ、リディアン・ヴォーンもよかったけど、やっぱモスキートを演じたマーク・チャオとモンクを演じたイーサン・ルァンが抜群によかったってのも大きいでしょう。
この映画は当初、ジェイ・チョウがモスキート役だったらしいけど、予算の問題やタイミングでマーク・チャオに決定したらしい。ジェイ迷のわしですが、この映画はこのキャスティングでよかったなと思う。
劇場はわしの他は何故かご年配の方が多かったけど、見終わったあと近くの席のご年配が久々にいい映画みたなーとお連れの方に言ってたのにはニヤリとしますた。
うん、いい映画だとわしも思う。
2010年 台湾
監督:鈕承澤(ニウ・チェンザー)
出演:イーサン・ ルアン/マーク・チャオ/マー・ルーロン/リディアン・ヴォーン/クー・ジャーヤン