HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

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十月圍城

十月圍城

STORY

1906年、香港ビクトリア・シティ。打倒清朝を目指す孫文は、中国各地から集まった革命家たちと密会していた。それを知った清朝は、孫文を暗殺するため香港に数百人の刺客を送る。一方、孫文を護衛するため有志を募った活動家・少白(レオン・カーファイ)の元には、ギャンブル狂いの警察官・沈重陽ドニー・イェン)、商人の李玉堂(ワン・シュエイン)とその息子・重光、人力車の車夫・阿四(ニコラス・ツェー)、物乞いの劉郁白(レオン・ライ)、豆腐売りの王復明(メンケ・バータル)、革命家の娘・方紅(クリス・リー)らが集結。孫文が香港に滞在する5時間、多くの国民の希望を背負った彼らは命がけでこの戦いに挑む。(yes.asiaさんより抜粋)

REVIEW

以前から、かなーり観たかった映画『十月圍城』もブロ友さんからのご好意でお借りできました。Sさん、改めてありがとうございます。

ここからネタバレありなんで、読みたくないかたはスルーしてください。

この映画は製作からいろいろあって、ようやく公開までたどり着いた作品。監督は陳匇森 で製作は陳可辛。

イギリス植民地時代の香港を舞台に、中国革命の父孫文の警護にあたった8人のボディーガードたちの姿を描いていて、孫文自体はあまり出てきません。主人公はあくまで孫文のボディーガード達です。

孫文が香港に来る前夜までの前半と香港に滞在する5時間、孫文の暗殺を目論む清王朝の暗殺集団とそれを守る主人公たちの攻防が描かれている。

甄子丹(ドニー・イェン)、梁家輝(レオン・カーフェイ)、謝霆鋒(ニコラス・ツェ)、黎明(レオン・ライ)、范冰冰(ファン・ビンビン)、胡軍(フー・ジュン)、王學圻(ワン・シュエチー)と豪華な俳優陣の顔ぶれ、そして孫文のボディーガードの話と聞いただけで他の情報を入れなかったので、単純明快な娯楽的な作品だと勝手に思ってましたが、物語はシリアスな内容。でも、期待を裏切らないすごく見応えのある内容ですた。

前半の孫文が香港にくる前夜までは登場人物の背景や心情が上手く描かれていました。この前半の展開をだるいと思う人もいるだろうけど、登場人物を丁寧に描いた事で後半の悲しみや葛藤が上手く表現できたのではないかと感じた。

シリアスな内容ながらも後半は怒濤の展開とアクションシーンで見事な娯楽性も感じられる展開。

甄子丹のアクションはかなり体当たりでもの凄く見応えがある。メイキングを観るとさらに凄いなぁと感じますた。

重陽 役のドニ兄さんなんですが、前半は博打好きの清王朝の警官で別に清王朝の為に働いているワケでもなく、ただ博打の為に金を稼いでいるようなダメ男なのです。だから、妻(ファン・ビンビン)にも逃げられてしまうんですねぇ。ちなみにその妻は今は大商人の李玉堂(王學圻/ワン・シュエチー)の第四夫人となっているわけです。

そして、その元妻のある告白がキッカケで沈重陽孫文ボディガードとなる訳なんです。そのキッカケがなんていうか切ないんですよね、もう人形が泣けるっていうか、前半の姿と打って変わって命がけな姿に切なくなってしまう。沈重陽が最後に観た望みに胸が締め付けられた。

もう一人の主人公である活動家・少白(梁家輝/レオン・カーファイ)はどちらかというと、インテリで非力な印象。控えめな役柄なんですが、やっぱりこの人は演技の上手さが際立つ。安定感抜群な存在ですた。

でも、この物語の本当の主人公は商人を演じた李玉堂(王學圻/ワン・シュエチー)だと思う。もう、本当にワン・シュエチーが素晴らしい演技で李玉堂という人物を好演していた。

李玉堂という人物は一応は中立的な立ち位置であくまで商人というスタンス、最初は孫文の思想に共感する活動家・少白の事も深く関わらないように過ごすし、自分の息子が活動家となって運動しているのも反対しているタイプの人間なんですけど、いろんな出来事が一気に起こって自分の中でくすぶっていた感情が彼を奮い立たせる。

自分の顔の広さや人脈を使い護衛を募って動き出すんですね。自分の築き上げた今までの地位も名誉も危険に冒されるし、他人の命を巻き込む行為でもあるワケです。だから彼はその重圧に苦しむ。李玉堂の希望と葛藤が画面を通してダイレクトに伝わる。

特に、反逆軍のリーダー方天(サイモン・ヤム)が死に、少白が清王朝に捕らえられたとき、少白の新聞社で震えながら立ち上がった姿は心を打たれますた。

その反逆軍のリーダー方天を演じたサイモン・ヤムと娘・方紅もよかった。父と娘も活動の中で確執があって、娘の方紅は方天と喧嘩して暴言を吐いてしまう。それが父を失ってから後悔の念となり彼女を突き動かす。思い出すのは活動家じゃなく父親としての方天の姿なんですね、それがちょっとの時間で上手く表現されていた。

少林寺僧の巨漢の存在もよかったし、エリック・ツァンが演じる英国側の警官の存在といい、ほんと人物像と人間関係を丁寧に描いたなぁと思いますた。一瞬しか出演しなかった張學友の存在もいい。冒頭の學友さんの存在が物語を惹きつける原動力だった。ほんと、ちょっとの出演なんですけど。

あと、車夫・阿四 役のニコラス・ツェーがいい、かなり良い。阿四は控えめで純朴なキャラクターなんだけど、とっても魅力的に演じている。阿四は李玉堂に仕えている車夫(人力車引き)なんだけど、厳しくも優しい李玉堂を慕い、李玉堂の息子、重光(ワン・ポーチエ)を弟のように思っている。彼は李玉堂と重光を守る為に護衛となる。

この阿四が泣けるんだよねぇ。特に暗殺集団のリーダー(胡軍/フー・ジュン)を食い止める場面はもうかなり泣けた。最後の手ぬぐいが何とも言えん。

今までのニコのイメージとは違うけど、演技に深みが出て印象的だった。

すごく演技の幅が広がっているというか、確実にいい役者になっている。

李玉堂の息子、重光を演じた王柏傑(ワン・ポーチエ)もよかった。正義感が強く、父・李玉堂とぶつかったり、純粋に未来に希望を持つ青年を演じていますた。どこかで見た事あるなぁと思ったら、『九月に降る風(九降風)』で一番印象強かった男の子ですた。個人的には『九月に降る風(九降風)』のキャラクターも良かったんで、これからが楽しみな俳優さんです。

敵役・閻孝国 役の胡軍(フー・ジュン)は眉毛が無い上になかなかの非情っぷりで怖かった。いやー、『レッド・クリフ』の趙雲はどこいった?っと言いたいくらい印象ががらりと変わったのでビックリ。胡軍に関してはいい役のイメージがあったので、今回の役は驚きですた。でも、最後は意外とアッサリなんですよね・・・ちょっと勿体ない気も・・・

それと、忘れちゃならないのが黎明(レオン・ライ)。なんか世捨て人な姿で登場なんですが、最初それが黎明(レオン・ライ)だとまったく気づかず・・・そのレオン・ライが演じる劉郁白が暗殺集団を阻止する場面は見応えがありますた。っていうか、鉄扇を操るレオン・ライ、格好いい。出番は少ないけど印象に残る役ですた。

物語は革命の裏で犠牲になった人たちの姿が描かれていた、数年後に辛亥革命を成功させるまでにどれだけの犠牲があって新しい時代を築いてきたのかと、痛みというには大きすぎる代償だと感じた。先人たちはこうして歴史を築き、命を犠牲にしてきたかと思うと言葉にできない。

中文字幕で観て正直、細かい部分は把握できなかったんですが、それでもかなり見応えあり。っていうか、物語にグイグイ引き込まれて時間の経過を感じなかったです。

いろいろ考えさせられるけど歴史に触れるいいきっかけだったし、こういう映画を作れるパワーが凄い。

日本でもこういう作品はどんどん公開してほしいし、是非見て欲しいと思う。

っていうか、観なきゃいけないでしょ。日本公開してくれ~と切に願います、ハイ。

2009年 香港製作

監督:陳匇森 (テディ・チェン)

製作: 陳可辛 (ピーター・チャン

出演:甄子丹(ドニー・イェン)/梁家輝 (レオン・カーファイ)/胡軍(フー・ジュン)/黎明(レオン・ライ)/ 謝霆鋒ニコラス・ツェー)/范冰冰 (ファン・ビンビン)/王柏傑 (ワン・ポーチェ)/任達華 (サイモン・ヤム)/曾志偉 (エリック・ツァン)/ 王學圻(ワン・シュエチー)