HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

インファナル・ディパーテッド/黒白道

STORY

香港警察の潜伏捜査官ホイサン。彼はマフィアの忠実な一員を完璧に4年間演じ続け、ついにはその名を香港中に轟かせるボス、ダークの全幅の信頼を得るまでになる。そして満を持した一斉摘発オペレーションによりついにダークを逮捕、ホイサンは晴れて警察に戻ることになった。しかし古巣に戻った彼を迎えたのは、猜疑に満ちた同僚たちの目。そしてホイサン自身もあまりに長い間黒社会の掟に身を晒して生きてきたため、市民として普通の生活を送ることにどうしても違和感を感じてしまう。

REVIEW

出演者がニック・チョン、秋生さん、鎮宇ってことで観たいなー、なんて思いつつ邦題タイトルに抵抗を感じ放置。

やっとさ鑑賞する事ができますた。っつーか、何なの?この邦題タイトル(笑)??

インファナル・アフェア」を知っている方なら邦題タイトルで想像つくでしょうが、潜入捜査官が主人公です。

んが、潜入中の話ではなく、主人公が潜入捜査官の役目を終え普通の警官として過ごす姿を描いた内容です。

なので、「インファナル・アフェア」のような内容だと思って期待しちゃいけません。でも、個人的にこの映画の内容は嫌いじゃないです。

主人公のホイサン(ニック・チョン)は警官になった直後から8年もの間、潜入捜査官として徹底してマフィアの一員となりすまして生きてきた男。ようやく警官として日の当たる立場に戻っても、マフィアだった自分と重なり違和感を感じてしまう。

序盤、警官に戻ったホイサンが制服を着る場面。その制服を着慣れなくて、鏡に映る制服姿に違和感を覚える場面が印象に残る。主人公のこの先を暗示するように、この場面が物語の進行と共に頭によぎった。

しかも警察に戻っても、同僚たちには疑われ監視され、元のマフィアの仲間からは裏切り者として扱われてしまう。物語が進むにつれ、徐々にホイサンの心は追いつめられてしまうんですねぇ。警官に戻ったせいで、マフィア時代の恋人にも振られ、仲間にも裏切られてしまう。もう、踏んだり蹴ったりで、観ているコチラまで惨めな気持ちになってしまう。

ハーマン・ヤウ監督って、観ている側も気持ちが元気じゃないと折れそうな演出をするから、ちょっとリスクを伴う。

だけど、地味に少しづつ毒を吐くような演出が上手い。

淡々とした暗い演出が却って現実味を帯びて、主人公の追いつめられていく様子や気持ちが伝わるとこがいい。

もちろん、ニック・チョンの演技も良かったのが功をなしている。

主人公ホイサンの心の動きを捉えていて、表情ひとつにしても微妙な使い分けをしているのが見て取れる。

この手の映画は派手な演出もないし、淡々としているので演じる役者の力量を問われるんじゃないかなぁと感じる。

このニック・チョンは一見の価値があるんじゃないかなぁ。

秋生さんは主人公ホイサンが警官に戻った後の相棒役なんですが、一見、ホイサンに対して冷たいっつーか、ムカつくんですが実はホイサンの状況や心情を一番理解している人。だけど、秋生さん演じる相棒のその心意気が判ったのは終盤になってから。ホイサンが追いつめられてからしか判らないのがちょっと勿体ない。もう少し早い段階で相棒(秋生さん)の心情が見える演出をチラリとしてくれたほうが、説得力があったんじゃないかと。

マフィアのボス、ダークを演じた鎮宇は中盤の段階でいなくなってファンとしては寂しいんですが、ダークというキャラクターは男気のあるボスで存在感があり何気にオイシイ役どころですた。

ホイサンが警官に戻り、恋人もマフィア時代の仲間も失って、このボスも失ってしまう事を知る。警官であっても、マフィアのボスであるダークの存在っていうのはたとえ最終的には相容れない間柄としてもホイサンにとって大きな存在だったんじゃないかなぁと感じる。

マフィアの頃と警官に戻ってからの日々が交互に演出されるんですが、観ていくうちに、マフィア時代のほうが良かったんじゃないかって思っちゃうんですよねぇ。ホイサンにとってマフィアの世界は嘘の世界であったし、早く普通の警官として戻りたかったはずなんだけど、いざ戻るとそこに自分の居場所がない。だからといって本当のマフィアにもなれない彼にとってはどちらも地獄でしかなかった。そう考えると悪いヤツになるほうが楽だったのではと思う。

だけど、ホイサンは真面目な男だったからこそ潜入先でもチンピラを徹底的に演じ、そして正義感が強かったから警官でいられた。だけど、その彼に残ったのは行き場の無い孤独しかなかった。そこが、やるせないし悲しい。

実に淡々と物語は展開していくし、大きく感動する部類でもなくオチもあっさりなんですけど、凄くリアリティを感じる物語ですた。本来の潜入捜査ってドラマティックなもんじゃないぞと教えてもらった気がする。

エンディングで、潜入捜査官が普通の警官に戻っても3年以内に離職するとテロップが出る。

この物語を観ると、「あぁ納得」と思いますた。

白道/ON THE EDGE 2006年

製作国:香港

監督:邱禮濤(ハーマン・ヤオ)

出演:張家輝(ニック・チョン)/黄秋生(アンソニー・ウォン)/呉鎮宇(フランシス・ン)/李彩華(レイン・リー)/曾國祥(デレク・ツァン)