HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

ハリウッド・ホンコン/香港有個荷里活

STORY

低所得者層が集中する香港最後の下町“ダイホム・ビレンジ”。そこは、国の再開発計画に従い近く取り壊しの運命にあった。それでも、町は依然として活気に満ちていた。ここで焼き豚屋“朱豚肉店”を営むチュウ一家は男ばかりの三人家族。貧しいけれどもそれなりに充実した毎日を送っていた。ある日、この店にトントンと名乗る女の子が現われる。店番をしていた末っ子の小学生タイニーは、上海からやって来たというその美しい少女を憧れの目で見るのだった。すぐ隣の“ハリウッド地区”にある高級マンションに住むトントンは、以来たびたび店を訪れるようになり、いつしか、タイニーばかりか兄ミン、そして父のチュウの心をも虜にするようになるのだったが…。

REVIEW

確実に好き嫌いが分かれる作品だと思うし、後味も悪い。でも、個人的にはかなりお気に入りの作品。

陳果(フルーツ・チャン)監督作品の香港返還三部作「メイド・イン・ホンコン」「リトル・チュン」「花火降る夏」のような雰囲気とは、またちょっと違う面白さ。

前半までは、心温まるハートウォーミングな展開の物語かなぁと感じる。ところがどっこい、一通の通知が届いてからは呆然となるような、そんな展開に戸惑う。

結構グロテスクなシーンや展開に唖然となりますが、それこそがこの映画の面白さですた。衝撃的って言葉がピッタリです。

いつもは素人を起用する陳果作品ですが、今回は主人公にジョウ・シュンを迎えています。でも、今回の娼婦の役はジョウ・シュンじゃなければ為し得なかったと思う。

とにかく役にはまっているというか、子供のような純粋な表情を見せたかと思えば、冷めた表情を浮かべたりと、まさに小悪魔。やっていることは最悪だけど、悪い女にハマる男の気持ちが解るような気がするくらい魅力がある。

そんな彼女がラスト、何事もなかったかのように普通の格好でハリウッドを歩く姿がまた何とも言えない。

登場人物が際立つというか、“朱豚肉店”を営むチュウ一家もつつましく暮らしていたがジョウ・シュン演じる東東と関わったことで欲や狂気な部分が表れて強烈な印象だった。

特に“朱豚肉店”の女性従業員があんな事になるなんて・・・想像つかんわい。

陳果(フルーツ・チャン)監督が映し出す世界というのは言ってみればカオスだ。混沌として、一見、爽やかな風を感じる下によどんだ空気が漂っている。高層ビルとバラック小屋、天使と悪魔、美しさと汚いもの、潔さと狡さ、相対するものが混然一体となって強烈な匂いを放つ。

この作品もブラック・ユーモア漂う中に、下町や低所得者、それに対峙するように高層ビルを映し出すことで、きっと変わりゆく香港の姿を描いているようにも思える。やるせなさとアンバランスさも感じる。けど香港という街やそこで生きる人々のバイタリティを感じずにはいられない。

独特な世界に引き込まれるパンチの効いた作品ですた。

2001年/香港

監督:陳果(フルーツ・チャン

出演:周迅(ジョウ・シュン)/黄又南(ウォン・ユーナン)/ホウ・サイマン/レオン・ツィーピン/グレン・チン