HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

楽園之瑕/東邪西毒  Ashes of Time

STORY

砂漠の宿屋で“西毒”こと欧陽峰(レスリー・チャン)は、殺し屋の元締めを営んでいる。彼が剣のために捨てた女(マギー・チャン)は、兄の妻となっていた。そして、親友の“東邪”黄薬師(レオン・カーファイ)がやって来る。薬師はそのあと桃花林へ向かい、親友の妻、桃花(カリーナ・ラウ)に出会う。その親友(トニー・レオン)は薬師によって妻との仲を裂かれ、行方不明になっていた……。(all cinema on line より)

REVIEW

今回でたぶん5回くらい鑑賞しているので、いいかげんレビューします。

でも、わし自身この作品に関しては回を重ねるごとに感想が違ってくるので、レビューするのがなかなか難しいんですよねぇ。

映画の構成に関して言えば、まず優しくない映画だよね。

ナレーションが入り交じって変わったりしているので誰が誰の事を語っているのか理解しづらい。香港映画ファンなら、この豪華な出演者だけでも楽しめたとしても、普通に映画を観る側としては登場人物を認識するのが難しいかも。

第一に、元ネタの『射雕英雄伝』『神雕侠侶』の東邪、西毒とはイメージがかけ離れすぎているし、ましてや一度観ただけでは内容が把握できない物語だと思う。

でも、不思議なもんで二度三度と鑑賞していくうちに味わいがあるというか、心に刻み込まれてしまう深さを感じてしまう。

物語は西毒こと欧陽峰(レスリー)が仲介人を営む場所に訪れる人々の物語を描いている。

誰もがどこかしら心に傷を抱えて陽峰の前に現れそして去っていく。そのひとつひとつが欧陽峰自身の物語にも繋がる。

ひとつひとつのエピソードが凄くいい。

特にトニーが演じた盲目の剣士のエピソードが好きだったなぁ。トニー自身は静かな演技なんだけど、その控えめな演技が却って功を成していたように感じますた。だから、目が見えなくなる前にひと目“桃の花”を最後に見たかった想いが切なく悲しい。

そして「酔生死夢」という酒がまたまた切なくさせてくれる。

想い人を忘れるため黄薬師は「酔生死夢」を躊躇無く飲み多くを忘れることが出来た。でも欧陽峰が口にしても彼には想い人を忘れることはできなかった。

劇中のセリフ

?『何かを忘れようとすればするほど心に残るものだ。ある人曰く、何かを捨てなければならない時は心に刻みつけよと』?

?『人に拒絶されないためには先に拒絶することだ』?

その言葉に、器用に生きてきたつもりの不器用な男の孤独を感じてならない。

物語の展開は複雑にしているけど、根本的にシンプルな恋愛を描いていると思う。でも、ここまで切なくさせてくれるのは、映像美や役者の演技力や魅力もあるだろうけど、それぞれの登場人物の想いを描いているところだと思う。それぞれが時として危うくもなり、間違いも犯す。取り返す事の出来ない過去が痛みを伴ってすれ違う。だから切なかった。

この映画は金庸小説の『射雕英雄伝』『神雕侠侶』に出てくる東邪、西毒という登場人物の若き日を描いた作品。物語自体、監督ウォン・カーファイがオリジナル化したもの。

なので、原作を知っている人はギャップに戸惑うと思う。ましてや、原作では黄薬師〈東邪〉も欧陽峰〈西毒〉も洪七〈北夷〉もじじぃですし、想像するほうが無理。それでも原作を把握しておくと解りやすいです。

ちなみにこの映画でも語っているように後に欧陽峰〈西毒〉と洪七〈北夷〉が大雪山で死闘を繰り広げるのですが、原作『神雕侠侶』のその二人の最期はグッとくるものがあります。

わし自身はこの作品を原作とは別ものとしてとらえてます。個人的には原作も好きですし、この作品も回を重ねる事に好きになってます。だけど、これほど好みがハッキリ分かれる映画もないでしょう。好きな人はかなりハマると思います。

第一、この豪華な出演者たちを一度に見れるのもなかなかないし、そのうえ全員が魅力的です。そして美しくどこか悲しげな映像美が素敵ですた。

でも、最後にぶちゃけますがこの作品より『大英雄』はもっと好きです。カーファイ監督ゴメンナサイ・・・

1994年/香港

監督:王家衛(ウォン・カーウァイ

出演:張國榮レスリー・チャン)/梁家輝(レオン・カーファイ)/林青霞(ブリジット・リン)/梁朝偉トニー・レオン)/張曼玉マギー・チャン)/張學友(ジャッキー・チュン)/劉嘉玲(カリーナ・ラウ)/楊采[女尼] (チャーリー・ヤン)