HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

恋する惑星/重慶森林 CHUNGKING EXPRESS

STORY

恋人に振られて落ち込んでいた刑事233号(金城武)は雑踏で仕事を失敗して憔悴した麻薬の運び屋(ブリジット・リン)と擦れ違う。どん底の2人はバーの片隅で再度出会い、ホテルで一夜を過ごす。一方その刑事233号の行きつけの屋台の売り子フェイ(フェイ・ウォン)は別の常連刑事633号(トニー・レオン)に片想い…。

REVIEW

考えてみると、王家衛監督って人はこの作品で香港映画の今までの雰囲気を一気に変えたよね。香港映画はジャッキーやユンファだけじゃない、スタイリッシュな作品があるって事を教えてくれた。

でもわし、王家衛監督の作品は相性がいいのと悪いのと半々なんです。この作品も実は昔観たときは妙なオサレ感がわしと相性が合わず・・・

でっ、ずーーーっと観てなかったんですが、何故か急に観たくなって久々に鑑賞しますた。

昔見たときはそれほどいいと思えなかったこの作品。たぶん、ストーリーを追うように観ていたからかな?

今回、雰囲気を味わう感覚で観ると凄くいいなぁと思えますた。あと不思議なもんで10年以上経って、なんか懐かしい雰囲気で観れたのがよかったのかも。

この作品は刑事633(トニー)とフェイ(フェイ・ウォン)、刑事223(金城武)と運び屋(ブリジット・リン)。その二組の物語が小食店〈ミッドナイト・エクスプレス〉でほんの少しだけすれ違って進行していく物語。

刑事633とフェイの物語は今見てもフェイが凄くキュートだなぁと思ってしまう。ストーカーっていうかそれって犯罪ですよ!っていいたく気持ちは相変わらずだけど・・・。

そして、フェイが「私服も素敵よ」とトニーに言ったセリフが何気ないけどよかった。チャウ・カーリン演じたスッチーの元彼女とトニーはお互い、警官とスッチーという姿というか、そんな類のフィルターを通してしか愛し合えなかったんだと思う。だからコンビニで再開したとき、お互い私服に違和感を感じてしまったんだよねぇきっと。

だからこそフェイのあのセリフが好きだったなぁ。

そして、最後のあの切符のシーン。ラストは妙に清清しくて気持ちがよかった。

また劇中で使われるママス&パパスの「California Dreamin'」とフェイ・ウォンが歌う「夢中人」(元はクランベリーズの曲)が耳に心地よく残りますた。

あと、一つ目の金城武とブリジット・リンの物語。以前はこのストーリーが訳わからなくてダメだったんですけど、トニーとフェイ・ウォンの物語以上に好きになってますた。

ブリジット・リン扮する運び屋が終始サングラスをかけ、金髪のカツラを被っているんだけど、そのサングラスの向こうに漂う悲壮感とか凄く今になってみると解るんだよねぇ・・・

大女優なのに、顔を見せずに雰囲気で感情を魅せたブリジット・リンはやっぱいい女優だったんだなぁと感じた。

また、ホテルで一夜を過ごすした後のポケベルのバースデーメッセージがかなりいい。あの靴を脱がせてあげただけの一夜が運び屋の女を再生させ、そしてバースデーメッセージが刑事223号を再生させてくれたんだなぁって思う。

あの後、運び屋が愛人に決別してカツラを脱ぎ捨てるシーンはグッとくる格好よさがあった。

なんで、昔はこの映画が苦手だったんだろう?すごく謎だわ・・・

で、今になって白ランニング&白ブリーフ姿のトニーにセクシーさを感じてしまいますた。やっぱ、白ランニング&白ブリーフが世界一似合う男だわトニー・・・

全体を通して、やっぱ音楽の使い方がよくて体をゆだねられるような世界観が漂っていますた。それと、臨場感あふれるカメラワーク。そして、魅力ある役者たち。この手の作品は雰囲気を味わってこその映画なんだなぁ・・・とつくづく感じますた。

きっと、昔、苦手だと思った映画が好きになるってそんなに無いことだと思う。

例えば10年後にまたこの映画を観たとき、もっと好きになっているんじゃないかな?と感じる映画ですた。

1994年/香港

監督:王家衛ウォン・カーウァイ

出演:金城武 /梁朝偉トニー・レオン)/王菲フェイ・ウォン)/周嘉玲(チャウ・カーリン)/林青霞(ブリジット・リン)