HK CINEMA LABO 映画と猫。ときどき雑記帳

映画ときどき猫。音楽、パソコン、趣味

月夜の願い/新難兄難弟

STORY

人情派の父ファン(レオン・カーフェイ)と現実派の息子ユン(トニー・レオン)は、考え方やライフスタイルの違いからいつも衝突ばかり。正反対の二人の間で、ユンの母ローラ(カリーナ・ラウ)は嘆き悲しむ毎日。ある秋祭りの夜、強盗に襲われて重傷を負ったファンは入院してしまう。ユンはふと父親のことが知りたくなり、ファンの秘密の箱を開け、両親の若い頃の写真が入ったペンダントを見つける。そして彼は、その頃の二人に出会うため、“何十年に一度、木星か月にキスした時に願い事が叶う”という中秋節の夜、願い事の穴に飛び込んだ。ユンは気がつくと、40年前の春風街に立っていた・・・

REVIEW

笑って泣いて、また笑って・・・この作品は何度観ても心が温まる。

香港版『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のような作りですが、陳可辛、李志毅の両監督は人間の心情、情緒を表現するのがやっぱ上手い。コミカルな笑い、親子の絆を切なく描いています。

しかし、最初カリーナ・ラウの特殊メイクに驚いたわい・・・最初見た時、あの母親がカリーナと気づくまで時間がかかりますた・・・

話はと言うと頑固でお人好しな父、ファンの行動が理解できない息子ユン。そんなユンが過去へ戻り若い頃の父と遭遇し、自分があれほど嫌っていた父親に自分が似ている事に気づき父の人となりを理解し成長する。そのストーリーが時には笑わせ、泣かせてくれる。

小道具を使った伏線の張り方、春風街の個性的な面々のエピソードに遊び心があって粋な演出。そして、若き日の父ファンや母ローラ、様々な人にめぐり合いユンの心に少しずつ変化が訪れていく様やその中に恋も描かれていて、いい要素がてんこ盛り。それぞれの場面で心情や情景に様々な音楽が効果的に使われている所もいい。

笑える所はきっちり笑える所がまたよかった。

ダンスシーンでローラをくるくる回すシーン、カーファイの妙な歌声、病院での目覚めのシーン、そして若き日のファンに「ローラのどこに惚れたのか」と聞くユンに「デカイ胸」と答え「オマエも好きなくせに」とユンに向かって言うファンのシーンなんて観てるこっちまでニヤリとしてしまう。

ユンが画策したある事がきっかけでユンを庇い誤解され、嵐の日に長屋を追い出されたファンに心を痛めて毛布を掛けるユン。それを二人で被ろうとするファン。

このシーンは一見、『親友』を思いやる姿なんだけど、そこにユンがファンに対し『父親』の人としての大きさに気づくシーンでもある。そこがまた泣ける。

そして、現代に戻ったユンが意識の戻らないファンの耳元で春風街で歌った歌を歌う。そのシーンが泣けて笑って、また泣けてしまう。そしてオチも香港映画らしいオチで面白い。

そして観終わったあと、コーヒーの湯気のようにふんわり温かで、ほのぼのとした気持ちになりますた。優しくノスタルジックな世界感に浸れる作品。

1993年/香港

監督:陳可辛(ピーター・チャン)/李志毅(リー・チーガイ)

出演:梁朝偉トニー・レオン)/梁家輝(レオン・カーファイ)/劉嘉玲(カリーナ・ラウ)/袁詠儀(アニタ・ユン)