柔道龍虎房/柔道龍虎房
STORY
柔道界で『柔道小金剛』とまで呼ばれたトップ選手のシト・ポウ(ルイス・クー)だったが、今は酒場の雇われマスターで、酒におぼれる自堕落な生活を送り、借金に追われる日々を送っていた。
ある日、そんなシトの前にトニー(アーロン・クォック)という男が酒場に現れて柔道の勝負を申し込んできた。最初は全く応じる気がなかったシト・ポウだが、突然、ステージに上がってサキソフォンを吹き出すトニーをなぜか気に入るようになる。そこに日本で歌手になることを夢にしているシウモン(チェリー・イン)も酒場に現れ、奇妙な3人の生活が始まり・・・
REVIEW
「香港映画で柔道?どないやねん?!」っと物凄く不安を感じたこの作品。妙にヘンテコな日本語やバッタ兄の「姿三四郎」の歌など、ツッコミ所も満載です。でも・・・
・・・!ええやないのー!!わし、何故か物凄く感動いたしますた!!
たぶんコレね、賛否両論となる映画の部類とは思うんだけど、わしは物凄くツボにはまりますた。
最初はね、凄くわかりづらいストーリー展開でちょっと不安だったけど、そこは演出が凄くよくて、例えば4台のテーブルのカメラアングルの使い方や演出で登場人物の関係図が凝縮されて上手く説明されていたし、光と影の技法とかストーリーを追いながら観ていて面白いっと思った。
あと、蔡一智ことバッタ兄がよかったなぁ。知的障害者の役で、父親が死んで施設に送られるんだけど道場のチラシを大事に抱える所とか、大乱闘の時、突然「姿三四郎」を歌いだしたりするところとか、ああいう演出が凄く面白かった。
そのバッタ兄と立ち直った古仔が抱き合うシーン、そしてその後の食事シーンでクセを古仔に注意されるシーンとか結構ぐっとくるものがありますた。
チェリー・イン演じたシウモンのキャラもこのストーリーには欠かせない存在で、決して夢を諦めない彼女がバスの中で泣く場面や、父親と台湾に戻ろうとするが、やっぱり諦めずに走り出す所とか、わし、忘れかけていた何かを思いだしちゃったよ。
そして、古仔が妙にしっくりと役に合っていて、セリフが少ないけど際立つキャラだったし、アーロンはアーロンで柔道バカなキャラで、その二人の存在そのものが対称的に描かれているのもこの映画を盛り上げる要素ですた。
その古仔とアーロン、そしてチェリー・インが木に引っかかった赤い風船を必死に掴もうとするシーンがあるんですが、そこに3人の何気ない友情とあっさり空へ飛んでいく風船の演出が夢を必死に掴もうとする気持ちやその儚さをシンクロさせているように見えて観ていて切なくなった。
観終わったあと思ったんですが、人間は勝ち負けにこだわるんじゃなく、その向こう側にある何かをつかむ事が大事なんだなぁと考えさせられる映画でした。
たぶん、わし自身が10代、20代の頃なら理解できなかったであろう、この世界感。少しだけ大人になった今だからこそ味わう挫折や敗北感、諦めてしまった心、色んな事を抱えてこれからも生きて行かなくちゃならない、でもそこから何かを掴んで立ち上がる事で人は築きあがっていくんだとそう思いますた。これは大人の為の青春映画だ。
2004/香港
監督:杜峰(ジョニー・トー)
出演:古天樂(ルイス・クー)/郭富城(アーロン・クォック)/應采兒(チェリー・イン)/梁家輝(レオン・カーファイ)/蔡一智(カルバン・チョイ)/廬海鵬(ロー・ホイパン)/張兆輝(チョン・シウファイ)