パープル・ストーム/紫雨風暴
STORY
ある日、香港海上で貨物船が襲われた。テロ組織は化学兵器“リシン-X”を強奪。しかし、すぐさま香港警察が駆けつけ銃撃戦に。テロリストのトッド(ダニエル・ウー)はその激戦で頭部に傷を負い、身柄を拘束された。対テロ部隊のマー・リーはトッドが過去の記憶を全て喪失していることを知り、新たに潜入捜査官としての記憶を植え付けて組織に送り込もうとする。しかし、組織がリシン-Xを使って大量殺人を企んでいると判明した矢先、組織に攪乱させられトッドを連れ去られてしまった。そんな中、トッドは徐々に過去の記憶を取り戻し始めていく…。
REVIEW
見ごたえのある作品で、展開に飽きのない作品ですた。
個人的にはパトリック・タムがちょい出ているので軽い気持ちで観ようと手にとりましたが、ストーリーも設定も人物背景も上手い仕上がりで次第に引き込まれていきますた。
内容も記憶を失ったテロリストを主人公にした為か、主人公トッドが曖昧な記憶のままもがく苦しみや、記憶が戻った後の葛藤が映し出されていて、ただのサスペンス・アクションではない構成がよかったです。
そのアクションもアクション監督トン・ワイが手がけただけあって、さすが。
目を見張るものがあってソツのない動き。それが随所にいきわたって見れたのも退屈しない要素でもありました。
とくにテロ側グンアイ演じたジョシー・ホーの動きがよかった!敵ながら天晴れといった感じです。
ストーリーも珍しく、普通は警察側に重点を置いて展開していくのが支流ですが、この作品はテロ側に重点を置いたのでテロの恐さや残酷さも説得力がありボス、ソンの持っている父としての姿、それとは対照的なテロリストの思想や残忍な姿、またトッドの妻でテロリストのグンアイの心中が描かれている点がストーリーに色濃く映し出されていますた。
例えば自分が日本ではなくトッドのような少年時代を送ったら恐らく自分もテロになっていたかもしれない。しかも自分ではテロではなく“戦士”と思いそれが正義と疑わなかっただろう。そういう事を考えざるえない作品ですた。
決してテロを擁護するわけではない。だけどテロ側の思想や概念、そして植えつけられたニセの記憶、だけどそのニセの記憶に少なからず身を委ねたため悩み苦しむテロである主人公の痛みや歪みが伝わった。
だからこそ、トッドは自分にとって大きな存在である父ソンと戦い、自分と戦うのだ。
そしてそれこそがトッドの妻でありテロリストであるグンアイの最後のセリフであり、この作品の最大のテーマだったと思う。
1999年/香港
監督:陳徳森(テディ・チャン)
出演:呉彦祖(ダニエル・ウー)/甘國亮(カム・コクリョン)/周華健(エミール・チョウ)/譚耀文(パトリック・タム)/何超儀(ジョシー・ホー)/陳沖(ジョアン・チェン)